Q&A

Q&Aでは、精神に障害を持った人の配偶者やパートナーが直面する問題について、解説・説明していきます。

「こんなことが知りたい」という要望があれば、メールにてご連絡ください。

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Q.自分自身がつらくなってしまったのですが、どのような対処方法がありますか。

A.集いの参加者の皆様も、同じような気持ちを抱えている方がほとんどです。

 ひとつの方法として、ご自身がカウンセリングを受けるという方法があります。家庭で起きている問題を整理するのに、役に立つ場合があります。カウンセリングは保険適用外のことが多いので、費用負担の問題が発生します。集いの参加者の方からは、「心理学科」がある大学等で比較的安価でカウンセリングが受けられるという情報を頂いています。また、加入している健康保険組合の福利厚生で、カウンセリングが受けられることもあるようです。

 ご家族が追い込まれ、自殺を考えるほどにうつ状態が強く表れてしまうような場合には、精神科への受診をされる方もいます。適切な薬を処方してもらったり、精神療法を受けることは有効でしょう。

 また、集い(家族会)に参加して同じ立場の人たちと話すことも、ピアサポートあるいはピアカウンセリングなどと呼ばれ、効果が高いことが分かっています。

 その他、ご自身で取り組めることとして、アティテューディナル・ヒーリング(AH)に取り組んでいる方や、対人関係療法(IPT)の書籍を読んで参考にされている方などもいらっしゃいます。

 「必ずこれがよい」というものは無いかもしれませんが、ご自身にあった対処法をみつけられると良いと思います。

 

Q.精神的におかしな言動が続いているので、受診してもらいたいのですが病院に行ってくれません。

A.精神の疾患は誰でもかかり得る一般的な病気なのですが、まだまだ偏見が根強いことも事実で、病気にかかってしまい苦しいはずの当事者の方も、なかなか受診へ踏み出せないこともあります。

 一般的な相談先としては、最寄の精神保健福祉センター(名称は自治体によって異なることがあります)、保健所、保健センター、市役所の相談窓口などがあります。ただし、残念なことに担当者によって対応の仕方が大きく変わってしまうという現実があり、大変な思いをして相談に行ったのに有効な手立てに繋がらないようなことはしばしば起こります。私たちの実感としては、親身になって相談に乗ってくれる支援者は2割くらいいれば良い方といった印象です。

 そんな時は、家族会に相談をしてみると良いかもしれません。家族会は当事者の親の立場の方が中心になっていることが多いですが、「病院に受診してもらえない」という悩みは親でも配偶者・パートナーでも共通です。みんなネット(公益社団法人全国精神保健福祉会連合会)のホームページに、都道府県連合会の情報が掲載されているので、そこから最寄りの家族会を探してみてください。地域に根差した家族会では、経験に基づいたアドバイスをしてくれると思います。家族だけで受診しても、相談に乗ってくれる医療機関などの情報も提供してもらえるかもしれません。本人の受診に繋がらなくても、水薬をもらって食事や飲み物と一緒に飲ませることで、精神症状が収まったような方もいらっしゃいます。

 配偶者やパートナーの立場では、関係性が近すぎるために当事者とぶつかってしまうことも多くあります。第3者に関わってもらうと上手くいくこともあります。当事者が仕事をしているのであれば、上司の方に助言していただくようお願いするのも良いかもしれません。親族であれば、本人と利害関係が少ない「母方の伯父(叔父)」のような方に助言をお願いすると上手くいくことがあるようです。

 あなたのことを心から心配しているということを、粘り強く伝えていく必要があります。

Q.「自分がおかしくなったのは妻(夫)のせいだ」と責め立てられ、とてもつらいです。当事者の発言を聞いた親族からも、同じように責め立てられてしまいます。

A.人間は自分の身に何かが起こった時、原因を探して理由付けをして、自分を守ろうとします。合理化することで、自分の精神を守っているのです。これが夫婦関係ではなく親子関係であれば、「自分が病気になったのは親の育て方が悪かったせいだ」となります。このように責め立てられる親の立場の方はたくさんいらっしゃいます。

 精神の病気は、もともと脳に脆弱性があり、ストレスなどの環境要因が重なった時に発症すると言われています。「ストレスをかけたのは配偶者・パートナー」だということを言われてしまうのですが、ストレスというのは結婚や出産、栄転や引っ越しなど、「めでたいこと」も含まれるのです。そんな部分にまで原因を追究していくのは、意味がありません。

 当事者から責め立てられてしまう時は、無理に否定してもうまくいかないことが多いようです。「そう思ってしまうんだね」と共感してあげることが大切です。

 病気を発症して間もないころは、親族も理解することが難しいことがあります。当事者と全く同じ心理で、原因探しが始まります。当事者と義理の両親から責め立てられてしまうような場合があり、そうなってしまうと本当につらい状況になってしまいます。親族との関係は、当事者の経過とともに変化してくることもあるようです。当初は配偶者やパートナーのせいだと思っていても、少しずつ病気を理解していくうちにそうではないと分かってもらえることがあります。

 義理の両親など親族に理解してもらえるようになると、これほど心強いことはありません。ただ、それを実現するまでの期間、配偶者やパートナーはとてもつらい時期を過ごすことがあります。

 ひとりで抱え込まず、仲間を作るようにしてください。家族会などに繋がり、同じような思いを共有できるようになると心が軽くなります。当事者を支えていくためには、何よりも配偶者やパートナー自身が健康でいることが重要です。ご自身を大切にするようにしてください。


Q.当事者から暴力をふるわれて困っています。どう対処したらよいでしょうか。

A.家族が精神障害の当事者からふるわれる暴力の問題は、深刻です。元東京つくし会会長の野村忠良さんは、家族会に寄せられる相談の半数が、暴力に関するものであったと報告していました1)。また内藤志朗さんは、双極性障害の躁症状で入院した患者さんの病歴を調査し、29.5%に身体的暴力が認められたことを報告しています2)。蔭山正子さんらは、主に統合失調症の家族が受ける暴力についての調査を実施し、やはり半数に暴力被害の経験があったことを報告しています3)。

 精神障害者の暴力は、そのほとんどが家庭内で起こることが知られています。最も対象となりやすいのは“母親”ですが、蔭山さんの調査では配偶者もおよそ1/4程度、暴力の被害を経験しているようです。

 配偶者・パートナー間の暴力はDomestic Violence(DV)に他なりませんが、いわゆるDV加害者が「圧倒的に男性が多い」と言われているのに対し、精神障害者の暴力に性差はありません。精神障害者の暴力は、故意に行っているわけではありません。病状が影響して、本当はそんなことをしたくないのに、そうさせられてしまっているのです。

 暴力の関係から離脱するには、適切な治療が必要です。また、家族の関わり方を変える必要がある場合もあります。

 とはいえ、現実に暴力が発生してしまっているときは、何とか対処せねばなりません。基本的には、暴力が始まってしまったときはその場から離れることです。病気であるからといっても、怒りが延々と持続することはありません。その場から離れてしまうと、怒りが“空回り”して、案外早く収まるということもあります。

 当事者が男性で、配偶者・パートナーの方が女性の場合は、公的機関の保護施設(シャルター)に入られる方もいます。「きちんと治療してくれるまで家に帰らない」等と伝えることも有効なことがあります。

 当事者が女性で、配偶者・パートナーの方が男性の場合、かつ小さなお子さんがいるような場合は対応に困ってしまうことがあります。男性が子どもを連れて避難できるような公的機関は、現実にはありません。暴れる当事者を、一晩中押さえつけていたようなことを経験している配偶者・パートナーの方はたくさんいます。一般に男性の方が腕力が強いので可能なことですが、これはとても切なくつらい対応の仕方です。

 イライラしてしまう原因を取り除いてあげることが一番の対応ですが、そのためには入院という選択肢を否定しないことや、外部のサービス(訪問看護や訪問介護など)を積極的に取り入れ、ひとりで抱え込まないことが重要です。


参考文献

1)野村忠良:地域で支援が届いていない膨大な数の人たち 孤立している家族 そのあまりにも過酷な状況.メンタルケア協議会シンポジウム報告書13;27-33,2011.

2)内藤志朗:躁状態下における犯罪行為と責任能力.犯罪学雑誌55;127-142,1989.

3)蔭山正子:統合失調症患者から家族が受ける身体的暴力 発生率と続柄との関連.日本精神保健看護学会学術集会・総会プログラム・抄録集25;137,2015.