精神疾患を抱えていても、安心して育児ができる社会に!
統合失調症や双極性障害、うつ病などの精神疾患を患う人は390万人を超え、国民の5人に1人が生涯のうちに経験する国民病となりました。精神疾患を抱えていても、結婚したり子育てをすることも、当たり前の時代です。厚生労働省の調査では、精神疾患を抱えた人の34.6%に配偶者がいます(厚生労働省,精神障害者社会復帰サービスニーズ等ニーズ調査 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/11/s1111-2c.html)。
子どもを産み、育てている当事者の方も少なくありません。「統合失調症圏」の女性患者のうち、3割から4割程度の方に、出産の経験があると言われています(関口ら,2007;下山,2005)。うつ病や双極性障害などの「気分障害圏」の当事者の方にどれくらい子育てをしている人がいるかのデータはほとんどありません。しかし気分障害圏の患者さんのキーパーソンは、経験的に配偶者・パートナーが占めている割合が多い様に感じます。恐らく、統合失調症圏の患者さん以上に、子育てをしている当事者の方は沢山いると思われます。当会が実施している配偶者・パートナー向けのアンケート調査では、まだ十分な数は集まっていませんが、約67%の方が子育てをしています。
子育てをすることは、健常な夫婦であってもとても大変な作業です。「精神疾患を抱えながら」の子育ては、普通以上の負担がかかります。
「誰かの手助けが必要」このことを否定する人は、誰もいないでしょう。では、その「誰か」は誰なのでしょうか? 真っ先に頭に浮かぶのは、配偶者・パートナーの存在だと思います。しかし、その配偶者やパートナーは、精神疾患を抱えた当事者の介護や大黒柱としての家計の支え手としての役割も担い、既に疲弊していることが多いです。当会に集まる配偶者やパートナーの立場の方で、「精神的・身体的に健康」と思われる方は3割に満たず、多くの方が「燃えつきる寸前の状態」です。
TBS系列で放映中の金曜ドラマ「コウノドリ」の第3話では、「産後うつ」が取り上げられていました。産後うつがお母さんの命、あるいは赤ちゃんの命の危機を招くことがあることに切り込んでくれたことを嬉しく思う反面、ナオトインティライミさん演じる旦那さんが、協力的でないように描かれていた印象があったことがとても残念でした。当事者の精神的不調に混乱するのは、最も身近にいる家族も同様です。吉田羊さん演じる助産師さんが、産後うつのお母さんにどのように手を差し伸べて良いか悩む姿が印象的でした。ドラマのワンシーンではありますが、あのような場面は全国で起きていることです。母子医療や母子保健の現場で、お母さんの精神的不調に気が付いていても、支援の手を差し伸べることができないもどかしさがあります。
一方、精神医療や精神保健福祉の現場は、当事者の精神的不調に対するケアはできますが、「子育て」に対する支援はできていません。身の回りのことができなくなり、訪問介護(ヘルパー)を導入したとしても、当事者の方の食事の準備や洗濯、掃除などはやってもらえますが、育児にかかわる部分は手伝ってもらえないことがほとんどです。つまり、赤ちゃんのミルクの準備や沐浴、赤ちゃんの衣類の洗濯などは手伝ってもらえないことがあります(厚労省の通達では、このような内容も支援に含めて良いとされていますが、実際の現場ではほとんど実践されていません。)。子育て支援センター(地域によって名称は異なる)などで、お母さんのためのヘルパーなどを行ってくれることがあります。こちらはお手伝いをする内容にそれほど制限はありませんが、一方で精神疾患に関する知識を持たない人が担当されていることが多く、どのように対応したら良いか悩んでいる支援者も多いようです。
精神疾患を抱えた親への支援については、当会の運営をサポートいただいている大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻の蔭山正子准教授が作成された「メンタルヘルスが気になる親への保健師による育児支援」(三菱財団研究助成)という冊子が、全国の市区町村に配布されています。精神疾患をもつ親に育てられた子どもたちの経験から、支援を考える取り組みもあります(精神障がいの親と暮らす親&子のサポートを考える会,http://www.oyakono-support.com/ ; こどもぴあ,https://kodomoftf.amebaownd.com/ )。数は決して多くありませんが、このような支援の取り組みを、一人でも多くの障害を抱えた家族に届けていくことが必要です。
そして、そのような支援の枠組みの中からも見過ごされがちだったのが、配偶者・パートナーへの支援です。東京都内で、11月23日(木)に、集いを開催します。配偶者だけでなく、子どもたちの参加も歓迎いたします。小学校低学年未満の子どもたちには、保育サポートがあります。小学校高学年~高校生くらいの子ども向けには、子どもたちの語る場を用意しています(恐らく国内で最も参加者の平均年齢が低い「家族会」です)。
集いへの参加が難しい方には、メールでの相談も承っております(tokyo_partner@yahoo.co.jp)。一人で抱えず、ご相談ください。
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